蟷螂の独白

とうろうのどくはく

             蟷螂の独白(とうろうのどくはく)

イテ!イテ!イテ!粉瘤姑息的手術体験記

意を決して別の皮膚科行き。

もうちっちゃな手術もしない、いかに同居人が世話になったとはいえ、あの皮膚科にはいかん。

患者が女だと丁寧に処置するのに、男だと「シッシッあっち行け」的にあしらわれるのは、それこそ遺憾だ。

それに今日行く皮膚科の方がはるかに近い。

ただし内科も併設しているから、この時期はちと怖い。

朝一でTELをして確認。

『前に何回か通ったのですが、今日は皮膚科の先生はいますか』

『ハイハイいますけれど、どうなされました』

『実は粉瘤が背中にできて困っています。処置していただけますか』

ここではねられたら『タコの吸出し』を使ってやろうと手配済みです。

『ハイ、できるものとできないものがあります。おいでになるならなるべく早めにお願いします』

あわてて粥をかきこみ、ママチャリを飛ばします。

9時半に到着しましたが、すでに待合室はほぼ満席に近く、ヒトますヒトますがビニールで遮蔽されている。

ふむ、医者はこういう配慮が必要だな。

変に関心しました。

窓という窓も開け放たれ、バカでかい空気清浄機がうなりをあげています。

お、支払いに自動精算機を導入した!

カードは使えるのかな?

などと考えていると、マンションの住人が呼ばれて入って行った。

アイツもここへ通っているんだ。

皮膚科かな?

30分ほどすると蟷螂が呼ばれました。

で処置用のベッドに腰かけて待つこと15分。

若い、髪をブラックジャック風に伸ばしたアンちゃんの先生がやってきた。

『土曜日に行った皮膚科で「うちじゃできない」って言われたんでここへ来ました』

正直に告白します。

『その場しのぎになりますけれどいいですか』

なるへそ、袋を残すから姑息的手段になるんだな。

『そうしたいのでここへ来ました。何しろ夜眠れないほど痛いので。やってください』

『ここでは切って中の膿を出す処置になります。これまでにどこかを切っていますか?』

『ハイ、心臓の手術をしています』

一応心臓の手術をしていることを申告します。

『薬品のアレルギーは?』

『サルファがだめです』

『とりあえず採血して細菌の有無を調べます』

マズイ、今朝眠れなかったのでユンケルを一発決めてきた。

『ハイ!・・・えっと朝ユンケル1本飲んできていますけれどいいですか』

『問題ないです』

そのまま先生は風のごとくどこかへ行ってしまいました。

で、腹ばいになると看護師さんが背中にペタペタ消毒液を何重にも塗りたくります。

そしてなにかを背中に掛けられます。

おそらく丸い穴の開いたペーパーでしょう。

その態勢のまま待つことしばし。

15分・・・20分・・・

待ちくたびれたころ、先生がやってきた。

キャスターの上の道具を見て、

『6ミリで、いや、10ミリかな、あ、それでいいよ』

何が何だかわからないうちに始まりました。

本日のメーンイベント。

『麻酔は痛いかも』

というや否やブス、ブス、ブス、ブス、ブス。

『イテッ、イテッ、イテッ、イテッ、イテッ』

看護師さんに

『丸く針を刺していますか?』

『そうなんです、もうすぐ終わりま~す』

針が刺さるたびに、蟷螂の足が跳ね上がります。

ブス、ブス、ブス、ブス。

10か所くらい針を刺されたので、粉瘤の痛みを忘れました。

で、3分くらいして、

『ここ、痛いかな』

『いや、痛くないです』

『じゃ、効いているな。これから切ります』

なにか背中に圧力を感じます。

ん・・・何かを押し出している。

ぐーっと。ぐいっと。

『血が出始めました』

いや膿は出たんかい?(心の声)

押されること10分、はい終わりました。

『明日朝もう一度来てください。今日から2週間は湯船につからずシャワーのみで、勿論飲酒は当分いけません』

先生はスタスタ別の患者のところへ。

えっ、湯船は2週間入れないの?

酒はともかく、湯船に入れない方がショックだった。

 

キャスターの上を見ると子供の握りこぶしほどの血まみれのガーゼが。

ふむ、だいぶ出血したんだな・・・で、出したやつはどこかな?

『えっと、見せていただけますか』

キャスターを片付けている看護師さんに話します。

やはり自分の体内から出たものは気になるのです。

『あら、そういうのを見たい人?』

『そうなんです』

なんなら家に持ち帰って今夜のおかずに・・・(心の声)

といいつつ、靴を履いていると、

『では待合室でお待ちください』と別の看護師さんに促されるがまま、見るのを忘れて待合室へ。

まっいいか。

待合室で悄然としていると『蟷螂さん、見るんでしょう』と言われて処置室の入り口に。

『白いのが皮膚で赤いのが膿で~す』

もうすっかりガラスケースに収まっているので見にくい。

でもコイツに散々苦しめられたと思うと憎たらしい。

昨夜も眠れなかったし。

もっとじっくり見たかったけど、まぁいいや。

その後、痛みは全くなかったけれど、薬局へ行き、帰宅したら麻酔が切れてきたのか、ズキズキ重い痛みが始まりました。

これはキズの痛みだな。

費用は1万円ちょい。

薬局の薬は千円弱。

処方された薬はケフラール、胃薬、アセトアミノフェンでした。

さ、今夜こそぐっすり眠るぞ!